船泊小学校いじめ防止基本方針

~ いじめを生まない学校づくりを ~

令和6年5月改定

はじめに

いじめは,いじめを受けた児童生徒の教育を受ける権利を侵害し,その心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を与えるのみならず,その生命又は身体に重大な影響を生じさせるおそれがあり,決して許される行為ではありません。

いじめは全ての児童生徒に関係する問題であり,いじめの芽はどの児童生徒にも生じ得るということを十分に認識する必要があります。

また,いじめの問題において,児童生徒が接するメディアやインターネットを含め,他人の弱みを笑いものにしたり,暴力を肯定していると受け取られるような行為を許容したり,異質な他者を差別したりといった大人の振る舞いが影響を与えているという指摘もあります。

その予防や対策については,今まで以上に,行政・学校・保護者・地域等が連携して取り組まなければならない問題であります。

北海道は,平成26年4月に「北海道いじめ防止基本方針」を施行し,平成30年2月には国の基本方針を参酌して改定されています。また,礼文町においても,道の基本方針を参酌し,令和3年5月に「礼文町いじめ防止基本方針」を策定しました。この度,「礼文町いじめ防止基本方針」の策定を受け,「船泊小学校いじめ防止基本方針」を改定することとしました。

以下の「船泊小学校いじめ防止基本方針」に示すいじめの防止等の対策は,いじめを受けた児童生徒の生命及び心身を保護することが最も重要であることを認識しつつ,学校,家庭,地域住民,行政その他の関係者の相互の連携協力の下,地域全体でいじめの問題を克服することを目指して行うものです。

 

Ⅰ 基本的な考え方

1 いじめ防止等に関する基本的な考え方

全ての児童生徒が自分が必要とされる存在であると感じ,互いの違いを認め合い,支え合うことができるような取組を進めることで,学校の内外を問わず,いじめが行われなくなるようにします。

(1)基本理念

① いじめの芽はどの児童生徒にも生じ得るという緊張感をもち,学校の内外を問わずいじめが行われなくなるようにすること。

② 全ての児童生徒がいじめを行わないよう,いじめの問題に関する児童生徒の理解を深めること。

③ いじめを受けた児童生徒の生命及び心身を保護するため,地域全体でいじめの問題を克服すること。

 

(2)「いじめ」の理解

 いじめの定義

児童生徒に対して,当該児童生徒が在籍する学校に 在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係にある他の児童生徒が行う心理的又は物 理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって,当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの。

 

いじめ理解の留意点

○ いじめを受けた児童生徒の中には,「いじめを受けたことを認めたくない」,「保護者に心配をかけたくない」などの理由で,いじめの事実を否定することが考えられることから,いじめに当たるか否かの判断は表面的・形式的に行うのでなく,いじめを受けた児童生徒や周辺の状況等を踏まえ,客観的に判断し,対応する。

○ インターネットを通じたいじめなど,本人が気付いていない中で誹謗中傷が行われ,当該児童生徒が心身の苦痛を感じるに至っていない場合も,いじめと同様に対応する。

○ 児童生徒の善意に基づく行為であっても,意図せずに相手側の児童生徒に心身の苦痛を感じさせてしまい,いじめにつながる場合もあることや多くの児童生徒が被害児童生徒としてだけではなく,加害児童生徒としても巻き込まれることや被害,加害の関係が比較的短期間で入れ替わる事実を踏まえ,対応する。

なお,軽い言葉で相手を傷つけたが,すぐに加害児童生徒が謝罪し教員の指導によらずして良好な関係を再び築くことができた場合等においては,学校は,「いじめ」という言葉を使わず指導するなど,柔軟な対応による対処も可能である。ただし,これらの場合であっても,いじめに該当するため,「いじめ防止・対策委員会」で情報共有して対応する。

○ 「けんか」や「ふざけ合い」であっても,見えない所で被害が発生している場合もあるため,背景にある事情の調査を行い,児童生徒の感じる被害性に着目し,いじめに該当するか否かを判断するものとする。

日頃からグループ内で行われているとして「けんか」や「ふざけ合い」を軽く考え,気付いていながら見逃してしまうことも少なくない。ささいに見える行為でも,表には現れにくい心理的な被害を見逃さない姿勢で対応する。

○ 児童生徒が互いの違いを認め合い,支え合いながら,健やかに成長できる環境の形成を図る観点から,例えば,「発達障がいを含む障がいのある児童生徒」や「海外から帰国した児童生徒や外国人の児童生徒,国際結婚の保護者をもつなどの外国につながる児童生徒」,「性同一性障害や性的指向・性自認に係る児童生徒」,「東日本大震災により被災した児童生徒又は原子力発電所事故により避難している児童生徒(以下「被災児童生徒」という。)」等学校として特に配慮が必要な児童生徒については,日常的に,当該児童生徒の特性を踏まえた適切な支援を行うとともに,保護者との連携,周囲の児童生徒に対する必要な指導を組織的に行う。

 

Ⅱ 学校の責務

 A「未然防止」という観点から

1 豊かな教育活動こそ最大のいじめ防御策

 教育の目的は「人格の完成」です。小学校ではその土台となる,知・徳・体をバランス良く育てることが大切です。それは同時に,いじめの芽を生み出さない土壌づくりにもなります。船泊小学校には,知・徳・体をバランス良く育てるための教育活動・計画が豊富に準備されています。全教職員が指導のポイントを押さえ,この日常実践をより豊かにすることが何より大切です。

 

2 「自信(校訓)」をもたせる指導のポイント

教職員は,あらゆる教育活動を通じて,「やればできる」=校訓「自信」をもたせる指導のサイクルを重視します。

基本形は「目標をもつ→主体的に取り組む→達成感を味わう→次の意欲をもつ」です。

 

3 各領域・分野で留意すること

(1)「わかる・楽しい授業」で学ぶことの楽しさを感得する

① 教職員・学校は校外研修,校内研修を通じて授業力を高め,子どもに「わかる・楽しい授業」を保障します。

② 礼文検定を各学年で必ず達成させ,やればできる「自信」をもたせて,全ての児童を中学校に送り出します。

 ③ 友だちと学び合うことの喜びを実感できる授業の工夫に努めます。

 

 (2)運動会・学芸会などの学校行事を節に,自己の成長と集団としての高まりを感得する

  子どもの成長の節となる学校行事では,3つの指導観点を重視します。

① 自分の役割をしっかり果たすこと

② 友だちと協力して目標を達成すること

③ 保護者や地域の方に感謝の気持ちを伝えること

 

(3)多様な縦割活動を通じて,より良い人間関係を学ぶ

 船泊小学校の特色である縦割活動は特別活動と同様の目標をもつと同時に,年下の面倒をみる・年上を敬い年上から学ぶ等,社会でも通用する基本的な人間関係の学びの場となっています。教職員は,一つ一つの活動の目標を子どもたちに分かるように伝えることが必要です。こうした縦割活動を引き続き重視し,毎年度その内容を見直し,充実させることで,子どもたちの豊かな人間関係づくりをすすめます。

 ① 学校を中心とした縦割活動       ② 地域連携の縦割活動

  ・毎日の清掃活動            ・御輿パレードや鼓笛パレード

  ・児童会や委員会活動          ・スポーツ少年団活動

  ・校外班の活動             ・カルタ大会

  ・運動会や学芸会の縦割種目       ・FS大会

  ・鼓笛活動

 

(4)学級集団づくりで,より良い人間関係を学ぶ

  横の人間関係をつくるために,学級では次の様な指導を特に大切にします。

  ① 友だちとルールを守って遊ぶ集団づくり

  ② 友だちと学び合う・教え合う学習集団づくり

  ③ 小さな小競り合いなどを自分たちで解決し,いじめ問題について主体的に考える機会を大切にするなど,住みよい学級のルールを友だちとつくれる集団づくり。

  ④ 人権侵害にあたる事例は(例えば,暴力・容姿などについてのいじわる等)については,教師が直ちに制止し,適切な指導を行います。

 

(5)道徳教育の重視を

船泊小学校の道徳教育の中心課題は人権教育です。特に次の内容を重点とし,「道徳の時間」や教科・教科外など学校の教育活動全般を通じて,子どもたちに丁寧な指導を行います。

【重点課題】人権教育3つの基礎に関わる事項を重点とします。

① かけがえのない自分の命や体・生き方を大切にすること。

② 同じように,周りの友だちの命や体・生き方を大切にすること。

③ 相互により良い人間関係をつくり上げること。

※詳細は,船泊小学校「道徳教育の基本方針」(作成中)を参照

【当面する実践課題】当面子どもの実態から,下記2点を共通する通年指導課題とします①元気な挨拶・明るい返事の通年指導

②場に応じた言葉遣いの通年指導

  ※児童会書記局が取り組んでいる「挨拶活動」など,人権やいじめ克服について子どもが主体的に考え,取り組める指導・激励を重視します。

【その他】体験的活動・ボランティア活動を大切にします。

  ①「はちまる交流会」  ②全町クリーン作戦等

   ※中学校区単位・礼文町独自の様々な体験活動・ボランティア活動に関わり,人権意識を高めます。

 

B「早期発見」という観点から

 1 「いじめの芽」を摘み取る学校の取組

(1)教職員による日常の観察(違和感=組織的検討を)

いじめは初期段階であっても,多くの場合いじめられている側は「遊んでいる」等と濁します。子どもが発するサインを見落とさないよう(資料①「いじめを受けている子どものサインの例」を参照)違和感をもった場合には,一人で経過観察などの判断をせず,直ちに組織的な実態把握を開始し,随時の個人面談(教育相談)など当面の対策ついて共通理解を図ります。

(2)年2回の「いじめアンケート」の実施と教育相談

最低の防止線として,年2回の「いじめアンケート」を実施し,現状の把握を行います。毎回,2割程度の子から「いじめられている」との訴えが考えられます。訴えには真摯に向き合い,各個人の状況について個人面談(教育相談)を中心に把握し,状況を全教職員で共通にし,正しい状況判断に努め,必要に応じて中・長期方針と当面の対処策等を共通にします。

(3)PTAとしての共同方針・取組の確立

   ※詳細は「Ⅲ(P.6~7)」に記載

(4)いじめがある場合

   実態調査等で,いじめの実態が明確になった場合,かなり深刻ないじめが進行していることが考えられます。この場合,児童の生命保護を最優先し,「C1①~⑨」を基本に対処に入ります。ここまで事態を放置しないよう,「(1)」「(2)」の中で実態をつかむことが基本です。

 

C「いじめへの対応」という観点から

1 いじめへの対応について

 いじめへの対応は,「いじめ防止・対策委員会」が行います。

① いじめを受けた児童生徒やいじめを知らせてきた児童生徒の安全確保と緊急の対策

② 緊急の教職員集団としての中長期の対策方針と体制の確立

③ 家庭や教育委員会等の関係団体との必要な連携・協議

④ 被害者・その保護者に対する必要な連携・協議

⑤ 加害者・その保護者への教育的指導・カウンセリングの実施

⑥ 保護者への周知と協力依頼を明確に示すこと

⑦ 学級・学校としての児童への指導方針の明示

⑧ 以上を実践するための必要に応じて個別のサポート体制を確立する

 

2 ネット上のいじめへの対応

 携帯・スマホ等の急速な普及により,犯罪への入り口・ネット上でのいじめが増加しており,礼文町でも事例が生まれています。こうしたいじめ・犯罪を防止するために,学校としてもこの分野の取組をすすめます。

 ① ネットパトロールの実施

 ② 情報モラル教育の充実(「道徳の時間」)

 ③ PTA研修会・講習会の実施

 ④ 関係機関との連携

 

3 教職員等の研修について

 いじめ防止,早期発見,いじめへの対応などが,専門的知識と豊かな人間性によって適切に行われるよう,教職員は必要な研究と修養に努めます。

 ① 諸法令・本校基本方針について校内研修の実施

 ② 町研・管内研・サークル等が行う研究会への参加

③ 局・教育委員会等が行う研修会への参加

 ③ その他

4 年間計画(いじめ防止プログラム)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Ⅲ 学校・家庭・地域が協力し合い,いじめに対応する

「未然防止・早期発見」の協力を

 1 PTAの共同方針として

学校と家庭・地域が協力し合ってこそ,未然防止と早期発見が可能になります。いじめ克服を保護者と教職員が共同で取組む課題とし,具体的な共同方針をPTA総会で提案します。(資料②別紙「PTA懇談資料」)

 

2 子どもの実態を多くの大人の目でつかむ

①「いじめアンケート」の結果や考察について,保護者(資料作成)・地域(学校だより)に明らかにし,学級懇談会で話題にするなど,普段から学校と家庭の連携・情報交換を強め,子どもに異常が感じられたときは,躊躇せず学校と連携を取り合うよう日常から共通理解を図ります。

② また,学校評議員会,自治会長訪問,各自治会の諸行事など,あらゆる地域との繋がりを生かし,児童についての情報交換・共通理解をすすめます。

③ 相談窓口・対応窓口

・相談窓口は原則「教頭」としますが,全ての教職員が対応します。どの教職員に相談しても,内容は教頭に報告され,直ちに「いじめ防止・対策委員会」において対応が協議されます。

・具体的な対応や連携・調整が必要な場合は,対応窓口は「教頭」に1本化します。

 

3 家庭,地域との協力・共同で,豊かな子育てネットワークづくりを目指す

 学校・家庭・地域が相互の児童の実態や課題を共通にし,地域ぐるみの子育てネットワークが一歩でも豊かになるよう学校の役割を発揮します。

(1)子育てを通じて「教師育ち」「親育ち」のあるPTA活動の充実と地域連携を

①教師と保護者が共同できる子育て方針を「PTA重点課題」として提案し,豊かな子育ての知恵と実践を学び合います。

②楽しみにされる学校だより(子どもの様子・頑張り・課題,学校の指導のポイント,家庭や地域で協力してほしいこと,いじめ実態調査の結果と考察等)を発行します。

 ③HPによる情報発信で,学校の様子や児童の頑張りを伝えます。

 ④平成25年度の総会で提唱した「基本的生活習慣の確立」「学校での学習の様子と家庭学習」「体力づくり」の3本柱に加え「いじめ克服」についても,年5~6回の学級参観懇談で常に交流・相談を行います。「いじめ調査の結果」「各種学校評価の結果」等に基づく,学校への要望や改善課題に関わる懇談も大切にします。

 ⑤学校行事等を通じて,地域と学校の架け橋となるPTAの役割発揮と活動の充実を図ります。

(2)地域にある子育ての力に依拠して

 ①地域の子ども会と連携を図り,地域みんなで楽しみながら子どもを励ます祭典づくりに積極的に関わります。当面,保小中が連携し合う祭典への関わりを模索します。

 ②各種スポーツ少年団等の活動を支援し,子どもを励まします。

 ③放課後ジュニアスクールと連携し,子どもの豊かな放課後の生活を支援します。

 ④「困っている子ども・保護者」へのサポートについて,関係機関と連携してすすめます。

 

Ⅳ 「船泊小学校 いじめ防止・対策委員会」(組織)の設置について

1 目的

 校内に「いじめ防止・対策委員会」を設置し,前述の基本方針を共通理解し,学校・家庭・地域・関係団体の連携・協力によって,いじめを許さない学校を日常的にすすめると共に,いじめが生まれた場合(重大事態を含む)の協議・適切な対処を進めます。

本組織がいじめについての相談・通報を受け付ける窓口となります。

2 体制

 校長・教頭・指導部長・PTA会長・学校評議員1名・礼文町教育委員会・その他

3 会議の開催

①最低年2回の会議を開催し,いじめ・児童の現状についての共通理解を図ります。

②その他,必要に応じて会議を開催し,必要な協議をすすめます。

4 連携機関等

 必要に応じ,次の関係機関等との連携を図ります。

  ①児童相談所             

  ②稚内市教育相談所          

  ③医師(船泊診療所・稚内市立病院)

  ④警察(船泊駐在所・稚内署生活安全課)

  ⑤主任児童委員/民生・児童委員

⑥人権擁護委員

⑦船泊中学校

 

【組織図】「船泊小学校 いじめ防止・対策委員会」

 

 

 

 

 

 

 

 

Ⅴ 重大事態への対処について

緊急で重大ないじめ事案が生まれた場合,以下の対応を基本とします。

1 礼文町教育委員会への報告

2 教育委員会の指導及び支援のもと,「調査」と「実施組織」についての実施主体の判断

3 学校が実施主体の場合は「Ⅳ」により,以下を基本に具体的取組をすすめます。

①「調査票」を作成・実施・分析

② いじめを受けた児童及び保護者への情報提供

③ 礼文町教育委員会への報告

④ 当面の対策方針と中・長期方針の確立,取組の開始

⑤ その他(「C1①~⑨」が対応の基本)